先日、山梨県の会社経営者・スタートアップ起業家の皆様に向けての講演の機会を頂戴し、「強み」をテーマにお話ししました。「強み」にフォーカスする、という論点は、安易な受け止め方をすると「今までのやり方で良い」「変わらなくて良い」というメッセージになりかねない・・とも思います。外部環境が変わり、変わらなければならないアップデートすべき時になぜ、一見、反するアプローチが有効なのでしょうか。
そもそも、エムクラスのクライアントのほとんどは、ファンドの投資先企業です。経営チームの「再構築のタイミング」において、上場・売却までの限られた時間軸で事業成長も含めて短期間で変革を図る企業と言い換えてもいいと思います。そのような状況にあっても、経営者がこれまでの延長線上ではなく、既存チームを変革しチーム力を最大化させることを望むのであれば、私は「強み」という一つのツールをまず最初に、もしくは同時に使うことを提案しています。
今日はなぜ、「まず最初のアクションとして強みにフォーカスすることが有効」なのか、3つの理由をお伝えします。
目次
まず最初に組織の強みにフォーカスする3つの理由
①意図して成功させる「再現性」のある状態を作るため
誰しも成功のパターンや、無意識の思考・感情・行動の組み合わせがあります。経営者も同じです。成功パターンの洗い出しは、エムクラスのエグゼクティブ·コーチングでも最初に行っていることですが、それを理解していると、偶然ではなく意図して良い結果を導き出すことができます。再現性のある状態を作ると同時に、実は失敗の傾向を事前に把握することができます。それは個人も組織も同じです。成功のパターンや、無意識の思考・感情・行動の組み合わせを、それぞれの個人や組織の「強み」として可視化します。
②社員の意識改革の際に、まず最初に心理的安全性を高めるため
組織の何かを変えようとするとき、課題の指摘からスタートしていませんか?
これはチーム変革に失敗する新しいエグゼクティブが最初にしてしまうことでもあります。最初に社員に課題を指摘すると、自分に悪い情報が集まらなくなり、的確な判断が難しくなります。まずは現状を把握し、特徴を強みとして肯定的に捉えて、より良い関係性を作ることが重要です。それらは上司と部下の関係性構築だけでなく、メンバー同士が自分と他人のそれぞれの得意なことや違いを認め合い、協力し合う関係の土台を作ることにも活用できます。
③変えてはいけない「DNA」のようなものを探るため
変えてはいけないもの、例えばこれまでのメンバーとの歴史から培われてきた組織の文化や関係性があるはずです。それぞれの強みは、どのメンバーがどこに鼓舞され、何に魅了されてきたのか、それを知る手掛かりになります。それらをよく理解し、見極めて、これからも維持発展させるべきものとして、尊重することから始めます。
チーム変革を進める「その時」を狙う
さて、エムクラスがチーム変革をサポートする際には、強みにフォーカスをしたチームビルディングを行うと同時に、既存組織の意識変革を進めていきます。具体的な手法の一つとして、事前の組織調査で明らかになった組織課題をもとに、そのチームの状態に合わせてエムクラスがオーダーメイドで提供するワークショップやプログラムがあります。その場で経営陣はアスピレーションを示し、メンバーは現状とのギャップを考え認めます。そしてそのギャップを埋めるためには、どう変わらなければならないのか、「Aの状態からBの状態になる」とチーム全員で決定したとします。しかしそもそも、「Bになりたいのになぜ今Aの状態なのか」、その背景にはどんな価値観や固定概念があるのかを洗い出し、根本から新しいプログラムに書き換えなければ、人の意識や行動は変わりようがありません。
組織としての新しいルールを決め、そのルールに沿った行動を定義し、行動し続ける。行動し続けるための仕組みの一例としては、クライアント社内でプロジェクトが発足されることです。それらをモニタリングサポートしていくことで、新しいチームを形作っていきます。
この時に重要なことは、”メンバー自らが課題発見・解決をした成功体験”を作り、チームでその成功体験を共有することだと思います。すると求心力がグッと高まる瞬間が訪れる。意図して経営陣は見守り、その時を狙って待つ。「自分たちこそが変わる、変えて行く」社員の準備ができて初めて、チームで一丸となってスタートラインに立ち、経営者は自身の考える戦略に基づき変革を進められると思います。
今日はなぜ変革フェーズにおいて「チーム力の最大化」をする為の最初のアクションが、「強みにフォーカスすること」なのか、3つの理由をお伝えしました。
2024年7月26日
株式会社エムクラス
代表取締役 村上しほり

【エムクラスについて】
「チーム力を最大化し、早期に結果を出したい」という変革フェーズの経営者の望みを支援するエグゼクティブ・オンボーディング。私たちは、経営チームの「再構築のタイミング」に特化したサービスを提供しています。
これまで多くのエグゼクティブのキャリア支援と、様々な事業フェーズ・チーム状態の企業での人材の採用・定着・活躍支援の実績に加えて、実践的なチームビルディングやコーチング、組織開発の手法を有したメンバーが在籍しています。最も効果的なタイミングを狙う無駄のないスピード感を持った動きと、問題を未来志向でポジティブに捉え、関わるチームをチアアップする情緒的な価値も、クライアントより評価いただいている点です。