エグゼクティブオンボーディング私が大切にしていること

事業承継・M&Aの成否を分ける「組織の移行設計」を地方から-エムクラスが講演活動を通じて伝えたいこと

2026.09.17

事業承継やM&Aにおいて、株式や事業を引き継ぐための手続きだけでなく、その後、新しい経営体制をどのように立ち上げるかが成功の鍵になります。最も重要なのが最初の100日間です。

後継者や新たな経営幹部が、既存の組織とどのように関係を築くのか。前経営者からどのように役割を引き継ぐのか。長く会社を支えてきた社員の理解を得ながら、どのように次の成長へ向かうのか。
こうした「人・組織」の移行は、事業承継やM&Aの成立後に初めて考えるものではありません。新たな経営体制への移行を見据え、早い段階から準備していく必要があります。

株式会社エムクラスは、この経営体制が変わる過程を「組織の移行期」と捉え、人財デューデリジェンスやエグゼクティブ・オンボーディングを通じて、新たな経営チームの立ち上がりを支援しています。
そして、この問題意識をより多くの経営者や企業支援に携わる方々と共有するため、各地での講演活動にも取り組んできました。

経営体制が変わるとき、組織で何が起きるのか

事業承継やM&Aによって経営体制が変わるとき、組織の中では、役職や権限の変更だけでは捉えきれない変化が起こります。
新旧の経営者の間で、意思決定の権限が十分に移行されない。新たな経営方針が社員に浸透せず、従来の仕事の進め方との間にずれが生まれる。新任の経営者や幹部と既存メンバーとの関係構築が進まず、組織内に戸惑いや不安が広がる。
こうした問題が重なると、新たな経営体制への移行が進まないだけでなく、意思決定の停滞やキーパーソンの離職など、事業運営にも影響が及ぶ可能性があります。
特に地域に根差す企業では、経営体制の転換が、社員や取引先、顧客をはじめ、地域との関係にも関わります。しかし、承継後やM&A後の組織づくりについては十分に検討されないまま、新たな経営者や後継者個人の力量に委ねられているケースもあります。

経営体制の変更を形式的な引き継ぎで終わらせず、新しい体制が組織に根づくまでをどのように支えるか。事業承継やM&Aの成否を考えるうえで、「組織の移行」は見過ごすことのできない課題です。

講演活動を続ける理由

忘れられない言葉があります。

「もっと早く知りたかった」

ある地方での講演の後に、いただいた言葉です。
その方は、先代から数年前に事業承継をして社長になられた方でした。

この数年の苦労を振り返って「あの時、本当は何が起きていたか」をご自身で言語化された瞬間だったように感じました。
「そうか、課題解決に気を取られてきたけれど、もし強みに目を向けていれば・・」とおっしゃいました。もし知っていれば、起こらない問題があったかもしれない、違うベクトルに力を集中することができたかもしれない。それでも確実に苦労を形にしてこられた方でした。
だからこそ、その「もっと早く知りたかった」という言葉の重みをずっしりと受け取ったのだと思います。もし私が「その時」そばにいてさしあげられたら、社長が1人で苦しまなくてよかったし、もっと潜在的な会社の強みを引き出して差し上げることができたはずだと、出会いが遅かったことに不思議と責任感のような感情を持ちました。

各地の講演会の後には懇親の場を設けて頂くことが多く、多様なテーマとストーリーを伺います。
事業承継を控えた経営者の方、幹部育成や経営チームづくりに取り組まれている方、さらには地域社会との連携や移住者の視点から新規事業に挑戦されている方々、それらを支援する立場にある方。
「まさに今、聞けてよかった」と、どうか間に合うように。1日でも早く、この考え方と方法論を本当に必要とする方に届けたい、私の強い使命感です。

長年培ってきたDNAの価値

東京だけでビジネスしていた方が、効率よく経済合理性があるかもしれません。ではなぜ、私が東京だけでなく地方各地で経営者と対話することを大切にしているのか。
事業承継や人手不足の問題が深刻で、そこに解決すべき「課題」があるからだとは、考えていません。
私が地方に目を向ける理由は、長年培ってきた技術や取引先との信頼、地域とのつながり、その会社を支えてきた人たちの知恵など 、当事者にとっては当たり前になっている潜在的な強みがたくさん見えて、魅力的だからです。

外から見ることで、初めて気づける価値があります。一方で、経営者や組織が変わるとき、その価値が十分に引き継がれないまま失われてしまうこともあります。事業承継やM&Aは、会社を残すためだけのものではなく、これまで蓄積してきた強みを捉え直し、次の成長につなげる機会にもなり得ます。

変えてはいけないDNAを見つけて、大切にしませんか。

各地での講演は、私たちの知見を一方的に届ける場ではありません。それぞれの土地で企業を営む経営者の経験や考えに触れ、対話を通じて、その会社が持つ可能性を一緒に見つめる場でありたいと思っています。そうした対話を各地で重ねていくことに、私は大きな意味を感じています。

地方から最先端

以前、東京が最先端ではないと心を打たれたことがあります。
海外に採用の場を広げ自ら赴き、人材獲得をしていく社長のエピソードを実際に伺った時です。長らく東京で人材紹介業をしていた私は、地方での採用がいかに難しいか容易に想像がつきます。なぜなら、当時いただいたご相談にお応えできないことが多くあったからです。
東京なら人がとれる、上場していれば人がとりやすい。比較をして現状に甘んじ、気付けば同質的な文化の中で茹でガエルになる危機感を持ちました。でも目の前にいるこの経営者は危機感を持っているのではなく、「危機」なのだとすぐにわかりました。危機感と危機とでは、認識が大きく異なります。厳しい環境で微調整をしながら身を置き続け言い訳をするのではなく、勝ち筋を見つけて新しいチャレンジをする。過去の成功モデルに捉われない挑戦に胸が熱くなりました。
地方が危機にあるのは確かに課題かもしれない、だからこそ、真のリーダーが輩出される。それが私が地方に目を向ける理由です。その潜在的な力と強みに可能性があると信じています。「だからこそ」、これが私が大切にしている考え方です。話はそれますが、生まれ育った熊本は2度も大きな地震に見舞われました。「だからこそ」と、その土地の持つ力と可能性を信じずにはいられません。

組織に「真の変革」をもたらす経営者を増やす

変革期の経営者を支える、最も重要な「最初の100日間」。新たな経営体制が組織に根づき、社員や関係者との信頼を築きながら、次の成果へつながっていくまでには一定の時間が必要です。
その過程で起こり得る課題をあらかじめ捉え、誰が、いつ、どのように支えるのかを考えておくことが、経営の空白や混乱を防ぐことにつながります。

エムクラスは今後も、各地で事業承継や企業変革に向き合う経営者との対話を大切にしながら、講演やセミナーを通じて「組織の移行設計」に関する知見を発信してまいります。
また、地域企業の将来を支える金融機関や支援機関との接点も少しずつ広げながら、経営体制が変わる局面で生じる人・組織の課題について、ともに考える機会をつくることで、新たな支援機会の創出に貢献できるものと考えています。

未来の会社はどうありたいか。

その時組織はどうあるのか。

そして、変えてはいけない、守るべきDNAは何か。

今こそ、リーダーシップを必要としている時です。