経営幹部の登用後に起こる課題は、エムクラスが継続して向き合っている重要なテーマです。そこで今回は、2026年1月26日に開催された日本キャリアデザイン学会「2025年度 第5回キャリアデザインライブ!」に、当社代表取締役の村上しほりが登壇した際の講演内容を、改めてご紹介します。
当日は、実際の事例を交えながら、「優秀な人を選ぶ」だけでは解決できない経営幹部登用の課題、がなぜ起こるのか、その理由を掘り下げ、役割移行期に起こる「構造要因」「心理要因」「環境要因」について解説しました。
目次
「優秀な人が活躍できない」のは、本人だけの問題なのか
優れた実績や経験を持つ人材を経営幹部として登用しても、期待どおりに活躍できるとは限りません。
講演では、優秀なCFOを採用したものの経営陣と方向性が合わなかったケースや、M&A後の経営を託した社長が既存組織を動かせなかったケースなど、経営幹部登用の現場で起きている課題を取り上げました。
こうした状況では、「本人の力量が足りなかった」「人選を誤った」と捉えられがちです。しかし、その背景には、期待する役割が言語化されていない、権限と責任が曖昧である、関係構築を支える仕組みがないといった、組織側の構造的な要因が存在します。
同じタイプの社長でも、なぜ結果が分かれたのか
経営幹部の活躍を左右する組織側の要因を具体的に捉えるため、異なる結果をたどった2人の社長の事例を紹介しました。
1人目の社長は、合理的な戦略を掲げ、着任直後から改革に着手しました。しかし、現場が大切にしてきた価値観や顧客との関係が十分に共有されないまま課題解決を急いで進めたことで、組織との距離が広がり、約1年後に交代することになりました。
一方、2人目の社長も、戦略的思考を強みとする人物でした。異なっていたのは、着任前に組織の状態や現場の感情、暗黙のルールを把握し、関係構築の進め方まで設計していたことです。
現場に席を置き、営業に同行し、対話の場となる「社長塾」を開催。十分な信頼関係を築いたうえで、社長個人の「My Plan」ではなく、組織の「Our Plan」として戦略を発表しました。その後、同社は約1年半という短期間で当初の目標を前倒しで達成することができました。
この事例を通じて、結果を分けたのは、単純な能力や人物タイプの違いではなく、着任時に組織の力学や現場の感情が共有され、組織全体の移行支援を設計できていたかどうかでした。つまり、既存組織を動かせたどうかが新しい社長の明暗を分けたのです。
経営幹部の活躍を支える「決める・伝える・待つ」
では、経営幹部の活躍を本人の力量や努力だけに委ねず、組織として支えるためには、何が必要なのでしょうか。2人の社長の事例から見えてきた役割移行のポイントを、「決める・伝える・待つ」の3つに整理しました。
- 決める:期待する成果、期限、活用できる資源を明確にする
- 伝える:フィードバックを通じて、本人が軌道修正できる仕組みをつくる
- 待つ:最初の100日間を、焦って成果を求める期間ではなく、組織を理解し、信頼関係を築く期間として設計する
新任の経営幹部には、早期の成果が求められます。しかし、関係性が構築される前に改革や課題解決を急げば、現場の抵抗や情報不足を招くことがあります。
最初に期待と前提をそろえ、フィードバックを受けられる状態をつくり、組織に合ったリーダーシップのあり方を見極めることが、その後の成果を支える土台になります。
経営幹部の登用を「人選」で終わらせない
日本企業はこの40年間で、戦略、組織変革、リーダーシップといった経営の中核機能を外部に委ねる構造が進みました。
経済成長の鈍化と年功序列による若手抜擢の機会の不足もあり、自社でリーダーを育て役割の変化に適応させる機能が弱くなりました。
いざ、外部から幹部人材を招いても、十分に活用できない状況が続いています。
今こそ、新しいリーダーを作り、同質的な経営陣から多様性のあるチームへ、そして過去の成功モデルにとらわれない組織風土へ。チーム力をアップデートし続ける必要があります。
未来の会社は、どうありたいか。そのとき、組織はどうあるのか。
経営幹部の登用は、優秀な人材を選ぶことではなく、経営の意思そのものです。
移行期間の不確実性と、さらにその先の組織づくりまで一貫して構造でマネジメントする必要があります。
エムクラスは今後も、外部人材の登用、内部昇格、後継者育成など、経営体制が変わる「役割移行期」において、新しいリーダーと組織がともに力を発揮できる仕組みづくりを支援してまいります。
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