「人生狂いましたよ。紹介した責任を感じてください」
12年前の冬、一本の電話から聞こえてくる言葉に、私は返す言葉もなく震えていました。相手は、私がヘッドハンターとして自信を持って送り出した、50代の社長でした。
輝かしい実績、申し分ないスキル、そして新しい組織への情熱。すべてが揃っていたはずでした。しかし、彼はわずか数年で、ボロボロになってその場を去ることになったのです。私は大きなショックで言葉を失いました。
人材紹介というビジネスモデルは、入社が決まった段階で手数料が支払われます。その瞬間は、新しい社長も、雇い主であるオーナーも、みんなが笑顔で成功を祝っていました。けれど、そのすぐ裏側で、一人のリーダーの人生が、そしてそのリーダーを信じた組織の未来が、音を立てて崩れていきました。
「なぜ、実績のある優秀な人材が、新しい組織で結果を出せずに辞めてしまうのか?」
この問いが、私の10年以上にわたる探求の始まりでした。
2500名の「初日」に見えてきたもの
私はこれまで、2500名を超える方々の「転機」に立ち会ってきました。 それは、華やかなキャリアのサクセスストーリーではありません。新しい職場に行ったその日から、何に戸惑い、どのタイミングで「ここは自分の居場所ではない」と絶望し始めるのか。
その生々しいプロセスを、派遣業という「現場」から、そしてエグゼクティブの「孤独」から、派遣業と紹介業の2つの違うビジネスモデルを通して見つめ続けてきました。人材派遣業というビジネスモデルは、活躍し稼働した分に対して売上が立ちます。私は人材紹介業に職を変えた後も自然と「入社後のフォローアップ」を命題として動いてきたと思います。
ある成長会社では、前職では大企業の事業部長として名を馳せたCOOが、最終出社日に、誰にも見送られずにIDカードを机に置いて去っていきました。 本人は「社長が仕事を任せてくれなかった」と言い、社長は「任せられる動きをしてくれなかった」と言う。 どちらも嘘ではありません。ただ、そこには決定的な「移行の設計」が欠落していたのです。
多くのお客様に揉まれ、教えていただいた対話の中にこそ、成功する組織と失敗する組織の法則がありました。
経営幹部登用のブラックボックス
欧米には『The First 90 Days』というバイブルがあり、エグゼクティブオンボーディングという支援文化が確立されています。しかし、それをそのまま日本に持ち込んでもまったく機能しませんでした。
一番の原因は、経営幹部の役割・期待が極めて曖昧であることです。その会社の「常務」の役割とは何か。その組織の「執行役員」と「部長」で、期待されるアウトプットはどう違うのか。いつまでに、どんなリソースをもって達成すれば成功で、どこからが失敗なのか。そして、もし失敗したなら、そのポジションをどう退き、次にどんな選択肢があるのか。辞めることはその組織の中でどのように位置付けているのか。
こうした「役割の構造化」が置き去りにされてきたのは、日本企業がこの40年間、過去の成功体験と同質的な経営層の中で、改善の延長線上に答えを求めてきたからです。
年功序列による抜擢機会の不足、安易なコンサルティングへの経営代替、そして「獲ること」に特化し、「活かすこと」には無頓着なまま肥大化した10兆円の人材市場。その結果、企業は自らリーダーを育て、異質な才能を適応させる筋肉を弱らせてしまいました。
人材の流動性は高まり、人が同じ場所に留まり続ける時代は終わりました。しかし、リーダーが育たない土壌のまま、異質なものを活かせない文化のままでは、せっかくの変革の動きも、人と組織の摩擦でこぼれ落ちてしまいます。これは一企業の問題ではなく、日本全体の構造的なボトルネックなのです。
100年後の未来へ、バトンを渡すために
私は今、43歳です。41歳の時に授かった子供の寝顔を見るたびに、強く思います。
私は100年後に責任がある。
この子が生きる100年後の日本を、今よりも「志あるリーダーが報われる社会」にしておきたい。優秀な人が、新しい環境でその実力を100%発揮し、組織と共鳴し合う。そんな当たり前のことが、技術(メソッド)として確立されている未来を作りたい。
私が恥を忍んで、自分の失敗や、これまでブラックボックスにされてきた「幹部登用の失敗」を語り始めるのは、それが私に課せられた「責任」だと思うからです。
今ここに、たくさんの志を持った新しいリーダーが実力を発揮して活躍する方法があります。これを早くみんなに届けたい、伝えたい。
私が10年以上かけて辿り着いた、「経営幹部を100日で活躍させる具体的な方法」のすべてを書き記します。これは、スキルや能力の話ではありません。 人と組織が、もう一度信じ合い、共に未来を切り拓くための「移行の設計図」の話です。
これが、私の果たすべき「責任」です。
偶然に委ねられてきた経営幹部登用の常識を壊し、
真の経営リーダーが自律した組織力を立ち上げ、企業価値を守り抜くための
“移行設計”を日本に実装する。
