「優秀な人を採用したはずなのに、思ったよりできない」
「最初の半年は順調だったのに、その後伸び悩んで停滞している」
こうした声を、多くの経営者から伺います。
しかし、それは経営幹部本人の能力不足ではありません。
最初の100日間に潜む“落とし穴”に、本人も経営者も気づかないままはまってしまっていることが原因なのです。
ここでは、幹部採用で陥りやすい3つの落とし穴と、その対策をご紹介します。
目次
落とし穴①:新しい幹部に早急に成果を求めすぎる
新任幹部が着任直後から改革や改善に動き、スピード感を示す。一見頼もしい姿に見えます。そして本人もそうありたいと動きます。
しかし実際には、チームを動かせなくなるリスクの方がはるかに高いのです。
組織文化を理解し、信頼関係を築く前に動いてしまうと、
- 「前任者やこれまでのやり方を否定された」とチームが受け取る
- 協力者が減り、必要な情報が集まらなくなる
- 幹部本人が孤立し、投資した人材が成果を出せなくなる
結果として、現場の抵抗により施策が進まず計画未達に。失敗原因は「戦略の誤り」よりも「人と組織の摩擦」にあることが多いのです。
対策①:信頼関係構築の期間を設ける
MITのダニエル・キム教授が提唱する「組織の成功循環モデル」でも、結果だけを急ぐと「悪循環」が始まると示されています。
だからこそ社長がまず整えるべきは、幹部に“信頼構築の時間”を与える仕組みです。
就任初期は「成果」より「関係性」に投資させる
観察・傾聴・対話を重ね、既存の文化を尊重する
方針発表は、チームの合意形成や信頼を得てからにする
実際、着任初日にいきなり大きな方針を語ってしまい、結果的にチームの反発を招いた幹部は少なくありません。信頼を築く前に「賛成か反対か」を迫ることは、組織に分断を生み、取り返しのつかないスタートとなります。
幹部に成果を求めることは必要です。しかし最初に「関係づくりに投資する」ことこそが、長期的なROIを最大化する唯一の道です。

落とし穴②:期待値を「伝えているつもり」で任せてしまう
「変革してほしい」「業績を牽引してほしい」よく使うフレーズですが、実際には人によって解釈が大きく異なります。
幹部は「期待に応えているつもり」でも、経営陣からは「期待外れ」と見えてしまうケースを多く見てきました。
V字回復のように明確なターンアラウンドなら成果は見えやすいですが、そこそこ業績のよいフェーズでは、評価も成果もぼやけやすい。そのあいまいさが、社長と幹部の間に溝を生みます。
特に日本企業では、役職定義やジョブディスクリプションが不明確なことが多く、次のような問題が起こりやすいのです。
- ミッションが曖昧なまま走り出してしまう
- 期限が握られていない
- 達成に必要なリソースを交渉できていない
これは幹部本人の問題ではなく、期待の整理をせずに「伝えたつもり」で任せてしまう企業側の構造的な問題です。
対策②:期待・期限・資源を明確に握る仕組みをつくる
小杉俊哉先生の「エンパワーメント・モデル」によれば、人をエンパワーするには What(何を達成するか)とWhy(なぜ重要か) を明確にし、How(どうやるか) は本人に任せることが不可欠です。
逆に、目的を伝えないまま細かな指示だけ与えるのは「指揮命令」にすぎません。
さらに危険なのは、何の目的も条件も示さずに「任せた」と言ってしまうケース。これは 「丸投げ」 です。
幹部にとっては拠り所がなく、結果として経営と現場の間に大きな齟齬を生みます。
What/Whyを握り、期限とリソースを合意したうえで、Howは任せる。
これが本来のエンパワーメントであり、期待のズレを防ぐ唯一の方法です。
また、期待は状況によって変化し優先順位も入れ替わるもの。常にキャッチアップするためのコミュニケーション計画も欠かせません。

落とし穴③:過去の成功体験をそのまま持ち込ませてしまう
新しい幹部に対して、「輝かしい経歴がある」「業界経験も豊富だから任せれば同じようにやれるだろう」そう思っていませんか?
実はこれが最大の落とし穴です。
新任エグゼクティブの約40%が、最初の18ヶ月以内に失敗すると言われています(Harvard Business Review, Ending the CEO Succession Crisis, 2005/McKinsey & Company CEO Excellence, Center for Creative Leadership, 2016)。
その主な理由はスキル不足ではなく、状況に合ったリーダーシップスタイルを選べなかったといった「適応の失敗」にあります。
同じ成果を出すにしても、事業の状況・組織のフェーズ・メンバー構成によって効果的なリーダーシップスタイルは異なります。
- ビジョンを掲げ方向性を示すリーダーシップ
- 明確な指示を出して進めるリーダーシップ
- やって見せて引っ張るリーダーシップ など
同じ人物であっても組織や事業のフェーズに合わせてリーダーシップスタイルを意図的に戦略的に切り替えなければ機能しません。
対策③:リーダーシップの再選択を仕組みで支援する
従来のリーダー育成は「自己認識 → 言動の変化 → 周囲の認識変化 → 周囲の行動変化 → 成果」という順序を前提にしてきました。
しかし環境が変われば、過去の延長では成果は出ません。
だからこそ、発想を逆にする必要があります。
- 求める成果は何か、なぜやるのか 最初にゴールに旗を立てる
- 成果を出すために、ステークホルダーの言動はどう変わるのか
- その行動を促すには、ステークホルダーのどのような認識変化を起こす必要があるか
- その認識に影響するために、リーダーの言動はどう変わるのか
- その言動を支えるために、リーダー自身の自己認識をどう高めるか
この「逆算型リーダーシップのプロセス」によって、環境に合った新しいスタイルを再定義できます。
その仮説検証に欠かせないのが フィードバックを受ける力。
経営幹部は「フィードバックを与える」機会は多くても、「受ける」経験は意外と少ないもの。
着任初期だからこそ、ステークホルダーから率直な声を引き出し、素直に受け取り、行動に反映させることが大切です。これは単なる謙虚さではなく、信頼を築き、成果につなげるために欠かせないスキルであり、トレーニングによって磨くことができます。
重要なのは、これを「本人任せ」にしないことです。
認知と行動を最適化するマネジメントを実装することで、幹部のリーダーシップスタイルは確実に更新され、既存のチーム力の最大化に繋がります。この、フェーズに合わせたリーダーシップスタイルの再選択を、とても上手く導入している社長がいらっしゃいました。幹部の採用成功・活躍率はまさに90パーセントを超えており、納得の事例でした。
まとめ
新任の経営幹部が伸び悩む「3つの落とし穴」についてお話ししました。
- 成果を急がせすぎる
- 期待を曖昧なまま任せてしまう
- 過去の成功体験をそのまま持ち込ませてしまう
この3つを避け、期待の明確化 →関係性の質 → リーダーシップスタイルの再定義 に取り組むことが、重要です。最初の100日間を単なる助走期間とせず、信頼・成果・変革の土台を築く重要な期間と位置づけることが、経営幹部の成功に直結します。
エムクラスのプログラムでは、このプロセスを 「採用ROI最大化メソッド」 として体系化。
新任幹部の 1日・30日・60日・100日の行動を明確化し、フィードバックを仕組み化することで、再現性の高い立ち上がりを実現します。

幹部に全てを任せるのではなく、社長が人材投資を回収する仕組みを導入すること。
これこそが、採用ROIを高め、次世代の経営を育てる最短ルートです。
自社の幹部採用・育成について関心のある方は、ぜひご相談ください。
株式会社エムクラス
代表取締役 村上しほり
