エグゼクティブオンボーディング

学術と実務の統合:日本キャリアデザイン学会レポートから紐解く「役割移行期マネジメント」の真価

2026.02.01

2026年1月26日、九州大学ビジネス・スクールの碇邦生氏と共に、日本キャリアデザイン学会にて「エグゼクティブ・オンボーディングの最前線 ~新任経営層の早期活躍支援の理論と事例紹介~」というテーマで登壇いたしました。

本講演で紹介したプログラムは、九州大学ビジネス・スクール講師であり、組織行動論・リーダーシップ論の専門家である碇邦生氏との共同開発により体系化したものです。
学術研究に基づく理論と、エムクラスが現場で蓄積してきた経営幹部支援の実践知を統合し、経営層の「登用後」に起きるつまずきを構造的に捉え、再現性ある支援モデルとして設計しています。

当日は、学術背景に加え、実際の企業支援事例をもとに、成果創出につなげるための具体的なポイントについて共有しました。

本研究会に関して、学会内でまとめられたレポートを、関係者のご厚意により特別に共有いただきました。
エムクラスが提唱する「決める・伝える・待つ」というフレームワークや、リスクマネジメントとしてのオンボーディングの重要性について、大変深く考察されています。
新たな可能性についても言及されていましたので、内容を改変せずそのままこちらにシェアさせていただきます。


【研究会レポート】全文
本研究会では、「エグゼクティブ・オンボーディング」をテーマに、新任経営層が直面する役割移行期の不確実性を、個人の能力や資質の問題ではなく、組織がいかに構造的にマネジメントすべきかという観点から整理していた点が強く印象に残った。学術的には、エグゼクティブ・オンボーディングとは、新たに着任した経営層が組織の戦略・文化・関係構造を理解し、早期かつ持続的に貢献できる状態へ移行するための、意図的かつ体系的な組織的支援プロセスと定義されている。これは一般的なオンボーディングとは異なり、「初期適応」ではなく「戦略的移行期のマネジメント」であるという整理は、実務の感覚とも整合的であった。

村上氏の講演では、外部採用・内部昇格を問わず、経営幹部登用の相当数が期待外れや失敗に終わっているというデータが示され、その主因はスキル不足ではなく、組織文化の読み違えや信頼関係構築の失敗にあると指摘された。人事の現場では、成果が出ない幹部に対して「本人の力量」「相性」といった個人要因に帰責しがちである。しかし実際には、期待される役割や成果水準、権限と責任の範囲が十分に言語化・共有されないまま任せているケースが少なくない。この点を「役割移行期の不確実性」として捉え、経営と組織の責任でマネジメントすべき対象と位置づけている点は、実務への示唆が大きい。

特に印象に残ったのは、「決める・伝える・待つ」という三つのポイントである。「変革してほしい」「期待している」といった抽象的な期待ではなく、期限と数値を伴う具体的な期待を決め、フィードバックループを通じて伝え続け、最初の一定期間は短期成果を急がず待つという考え方は、幹部登用後のつまずきを防ぐうえで極めて実践的である。実務上、幹部には自律的な対応を期待するあまり、支援や関与を控えてしまうことがあるが、それがかえって初期失敗を招いているという指摘には強く頷かされた。

労務を統括する立場からは、エグゼクティブ・オンボーディングは人材育成施策にとどまらず、紛争予防の観点からも重要であると感じた。登用時に期待や前提条件が整理・合意されていない場合、「聞いていた話と違う」「評価が不透明だ」といった不満が早期に顕在化し、結果として退職やトラブルにつながることがある。着任時点で活躍条件や支援の枠組みを明確にすることは、組織にとってのリスクマネジメントでもある。

社会人大学院修了後も研究会に参加している実務家として、本研究会は、理論が現場で感じてきた違和感を適切に言語化し、具体的な実践に落とし込むヒントを与えてくれる機会であった。今後は、幹部登用を「人選の問題」としてではなく、「移行期をどう設計するか」という経営課題として捉え直し、人事としてどこまで構造的に関与できるかを検討していきたい。


エムクラスとしての展望

レポートの中で言及いただいた通り、経営幹部の登用は単なる「人選」ではなく、不確実性をコントロールする「経営の意思決定」そのものです。

エムクラスでは、着任時点で移行リスクを可視化し活躍条件を設計する「着任時レビュー」や、移行期統合プラットフォーム「UNBOX(アンボックス)」など、現場知と学術知を統合した独自メソッドで、経営人材の早期活躍と組織の持続的な成果創出に貢献してまいります。

今回の研究会を通じて得た、リスクマネジメントや紛争予防といった新たな視点も、今後のサービス開発に活かしてまいります 。お招きくださいました、日本キャリアデザイン学会の皆様、誠にありがとうございました。

そして、この視点が、経営・人事・ガバナンスに関わる皆さまの議論の一助となれば幸いです。